労働環境

筆者の林真央は16年間オーストリア、ドイツのミュンヘンに在住。現在は横浜在住だが 日独コンサルティング・トレーニング・コミュニケーション会社のKoDeJa GmbHに勤務。ご質問やご意見はこのメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。へご連絡下さい。


15歳からドイツ・オーストリアで生活、帰国して気づいた当たり前の違い。生活や仕事の中で不思議に思った事やドイツあるあるを書いていきます。

日本とドイツの生活の違い

ドイツあるあるその① 不動産会社を通さないのは当たり前

ドイツの住宅事情は日本とは違い不動産会社を通さず、個人で契約する物件がとても多いです。個人で契約するとProvision(コミッション)やKaution(敷金)の他の手数料がかからないので、初期費用が安く抑えられるといったメリットがあります。ただし「引っ越す時は、入居した状態に戻して家を出る」という契約が殆どなので、掃除はもちろん、壁のペンキ塗りなどもやらなければならない場合も多く、入居時に既にあった傷やボイラーの不具合などは、必ず入居前に直してもらうか、証拠写真を撮ってから契約書にサインをしましょう。ドイツではインターネット回線の開通までに数か月かかる事もあるので、住宅が決まったらなるべく早く申し込みましょう。

ドイツあるあるその② 平日の食事は質素

ドイツの食事はとっても質素。朝と夜の食事をパンなどの軽いもので済ませ、温かいご飯を食べるのはお昼だけの人も多く、コンビニやカフェのように手軽で安く食べられるお店はありません。会社へ行く途中にパンやコーヒーを買いデスクで食べるか、シリアルで済ませてしまいます。お弁当文化はなく、子供たちはBrotzeit/Jauseと呼ばれるハムやチーズを挟んだパンとバナナやリンゴをもって学校に行きます。外食は高く、居酒屋のような店がないので、友達や知人を家に招いてホームパーティーをする事が多いです。また若い人たちは料理を持ち寄りで、自分の飲み物も自分で持ってくる事が当たり前となっています。

ドイツあるあるその③ 週末の過ごし方

ドイツ人の週末の過ごし方はとてもシンプル。散歩、サイクリング、読書、映画鑑賞、友達とカフェやコンサートに行くなどして過ごします。土曜日夕方から日曜日はお店が閉まってしまうので、ショッピングはもちろん、スーパーに買い物に行くこともできません。基本的にお買い物は平日の仕事帰りや土曜日の午前中に済ましましょう。ミュンヘンなどの大都市には必ず日本人コミュニティーがあります。外国で暮らしていると、日本人というだけで、異なる職種の人と知り合う機会もあるので、情報交換の場があれば参加するのもおすすめです。日本食材も買えるので自炊にはそこまで不自由は感じません。


仕事に対する考え方の違い

ドイツあるあるその① こんなに違う、働く事への考え方

個人主義のドイツと全体主義の日本。初等教育から個々の意見を尊重し個性を伸ばすドイツの教育と、周囲との協調性に重点を置きチームワークを養う日本の教育は対象的。そのため、仕事に対する考え方も全く異なります。会社のために働く日本人と自分のために働くドイツ人、彼らは仕事が残っていても定時になれば帰ります。個人の意見を主張しても、周りから白い目で見られる事がないからこそ出来る「ドイツの働き方」なのでしょう。

ドイツあるあるその② 仕事の範囲がしっかり決められている

日本の会社では担当者が不在でもチームで対応します。ドイツでは仕事の担当がしっかり分かれており、自分の管轄外の仕事はやらない事が基本です。そのため長期休暇などで担当者不在の場合は仕事の対応が遅れ、効率が悪い様に思えます。しかし担当者が決定できる事も多いので、時間をかけることなく物事が進む一面もあります。また残業に対する考え方も違うので、勤務時間内に仕事が終わらないのは効率が悪いと見なされマイナスの評価になってしまうことも。

ドイツあるあるその③ 「効率よく、無駄な会議はしない」が基本

ドイツと日本では会議に対する認識が違うケースがあります。ドイツではブリーフィングとミーティングの使い分けがしっかりしていて、チームや会社で共有する事は手短に報告し、調整や話し合いが必要な事は少人数のミーティングで意見を出し合い決定します。日本のようにとりあえず集まり情報を共有し、結論の出ない、または暗黙の合意などが多い会議は、組織の結束を重視し、組織単位で自分の仕事を考える「日本人の働き方」だと思いました。また、会社の規模により違いはありますが、日本人らしいと思った事は「会議のための会議」がある事。社外の会議の前に社内で会議、社内の会議の前に部署ごとの会議。これも日本特有なのではないでしょうか。


働き方の違い

ドイツあるあるその① 必要以上の連絡はしないがマナー

ドイツではペーパーレス化が進んでおり、オフィスでは日本のように書類に囲まれた社員の姿は見ません。また、あまりメール内容に関係のない人も㏄に入れて「共有」としてメールを送る事はなく、必要な項目を伝えたい相手にのみ連絡します。中間報告や書類発送のお知らも、毎回連絡をするのは「効率が悪い」考えるのでありません。契約が成立し期日を決めればその後は変更や問題が起きた場合のみ連絡をするケースが多いです。

ドイツあるあるその② 日本とドイツの「担当者」の違い

日本では担当者が決定する事はほぼありませんが、ミスや問題が起こると上司が同行して謝罪に行きます。ドイツでは自分の仕事に責任を持たされているので、マネジメントする上司が、担当者の仕事に口をはさむことはありません。また、自分の仕事内の決定は各担当がするため、ミスをすれば自分で対処し責任を負わなければいけません。

ドイツあるあるその③ 発言をしないのは意見がないと思われる

ドイツの職場では発言をしない人は意見がないものと思われてしまいます。上司に向かって異なる意見を言っても白い目で見られる事はないので、自分の意思をはっきりと伝える必要があります。また、仮にミーティングなどで意見の対立があったとしても、仕事と割り切っているので、その後、職場の人間関係がぎくしゃくする事は全くありません。

ドイツあるあるその④ 働く場所や服装の自由

効率性を重要視するドイツの仕事環境は、とても自由です。もちろん自分のデスクがある場合はそこで仕事をしますが、フリーアドレスの場合ソファやカフェテリアで仕事をしても良いし、効率が上がるのであればイヤホンで音楽を聴きながら仕事をしても良いのです。 服装も同じように自由で、銀行員やホテルマンでない限り、自分が働きやすい服装で出勤します。スニーカーやジーンズで働く人も多く、スーツを着て出社する人は日本より圧倒的に少ないです。


日本とドイツの資料の違い

ドイツあるあるその① 「誰でもわかる様に」と「プロフェッショナルに」

会議やプレゼンテーションで使う資料には日本と海外で大きな違いがあります。様々な部署の人が会議に出席する日本では、どの部署の人が見ても分かりやすく、後で読み直せる資料を作る事が当たり前となっています。しかし、ドイツでは直接にその会議に関係のない人は出席しません。その為、資料も「誰が見てもわかる」必要はなく、ドイツ人に日本向けの資料を提出するとプロフェッショナルでない、と思われてしまいます。また、ドイツではその場で決定する事も多いので、資料は基本その場でしか読まれないと思ってください。マーカーで書き込みをする人もいるので色彩を多用してしまうと使いづらい資料になってしまうのです。

ドイツあるあるその② イラストや矢印を多用しない

ドイツではグラフや文章を主に使って資料を作ります。イラストを多用すると幼稚、イラストの意味していることが分からないと言われます。イラストが与える印象や意味は国によって異なるので、代わりに画像を使用する事が多いです。また、矢印を多く使う日本人の資料は海外の人からしたらまるで暗号です。矢印の意味する言葉がなんなのか、説明を求められることもありますので、特に海外の技術者と共有する資料などでは多用は控えた方が良さそうです。

ドイツあるあるその③ 説明は結論を先に

言葉の違い(文章の並べ方の違い)が原因ということもありますが、ドイツのミーティングでは結論を始めに述べた後、その説明をします。そのため、資料に関しても結論を先に書きその後に説明を箇条書きにして簡潔にまとめることで、説明している人が今どこの項目の内容を話しているのか、資料を見ている人に伝わりやすくなります。また、アルファベットを使う資料で、強調したい文章を全て大文字で書くのも、海外の方から見ると、叫ばれているようで不快に思う、と言われたことがあります。


会社マナーの違い

ドイツあるあるその① 歓迎会&送別会

日本のように決まった時期に人事異動や新入社員が配属されることがないため、会社の歓迎会は基本ドイツにはありません。その代わりEinstandといい、新しい職場で働き始めてから1~2週間以内に手作りのケーキやお菓子を持参して職場のキッチンなどに置いておく習慣があります。また退職する場合はAusstandといい、その方法は様々ですが、退職する本人が送別会を催す習慣があります。

ドイツあるあるその② コーヒータイムは当たり前

日本ではミーティング以外で離席するのはサボリと思われてしまいますが、ドイツ人は頻繁に離席します。自分の仕事がひと段落したらカフェテリアでコーヒーを飲みながら同僚と会話したり、天気のいい日はテラスでコーヒー片手に休憩したりする人もいます。それでも、さぼっていると指摘する人はいません、成果重視なので効率よく仕事をしていれば文句を言われることはないのです。

ドイツあるあるその③ 仕事の飲みは勤務時間で

チームの打ち上げ、部署の懇親会、顧客接待など呼び方は色々ですが、仕事のためにプライベートの時間を使い、飲みの席で親睦を深める。日本では当たり前の習慣ですが、ドイツでは仕事とプライベートをはっきり分けるので、仕事を早めに切り上げ社内で軽い打ち上げをしたり、ランチで懇親会を開いたりします。会社から指示がありお客の接待をする場合は残業手当が付きます。プライベートの時間を大切にするドイツ人にとって仕事の延長で上司・同僚や顧客と飲みに行くことはありません。

ドイツあるあるその④ 風邪を引いたら休むのが当たり前

インフルエンザは当然ですが、風邪や体調が悪く会社を休むのはドイツでは当たり前です。病気で医者にかかるとKrankenschein(労務不能証明書)を書いてもらえます。風邪の症状で一般的には3日間ですが、その後も症状が治らなければ延長してもらえます。その間は有給扱いにはならないので給料は保証されます。また、他の社員も風邪がうつると困るので病欠で会社を休んでも文句を言う人は誰もいません。


初等教育から就職までの違い

ドイツあるあるその① 初等教育からの違い

ドイツでは小学4年生(10歳)で進路を決める必要があります。子供の頃から自分で考えて行動する教育を受けているため、職業訓練、実技学校、大学など、それぞれの進路に進み、社会に出た後も転職をしながらキャリアを積んでいきます。進学の年齢も皆違うので、大学に入学する頃には同期でも年齢差があり、年齢の上下を気にせず対等に発言することに慣れていきます。一方、日本では大学4年生で初めて自分の進路を決める場合が殆どです。就職も新入社員として企業に入社し、研修を経て与えられた仕事をこなしていく事が多いので主体的にキャリアを積む事が難しい傾向にあります。

ドイツあるあるその② 新卒一括採用の不思議

「新卒一括採用」は日本独特もので、就活の時期に決まった服や髪形をしている集団を見ると未だ異様に思えます。他のどこの国を見ても毎年一括で新卒生を大量に就職させる雇用形態はありません。ドイツでは大学で勉強しながら、実践で応用する方法を身につけるためにインターンシップを行います。インターンシップ先も大学の専攻分野を活かせる職種を選び、入社後も転職後も同じ職種に就く事が当たり前です。初等教育から就職するまで自分の職種を選び、勉強して、社会に出るからこそ責任を持った個人主義の働き方が活かせるのでしょう。

ドイツあるあるその③ 有給休暇の考え方

ドイツでは、有給休暇の取得は労働者の当然の権利です。社員、上司や取引先も全員休暇を当たり前のように取るので、罪悪感を持つこともありません。日本のように病欠に有給を使用したり、長期休暇を取ったりすると同僚に迷惑をかけてしまう、といった考え方もありません。労働時間、残業、有給や週末労働に関して労働法で厳しく定められているので、有給を消化していない社員がいると家に帰りなさい、と言われることもあります。また、ドイツ人は長期海外旅行に行くことが多く、2~3週間有給を取る事も当たり前となっています。